インプラント治療は、事故や歯周病、むし歯などが原因で歯を失った方に、見た目も機能性も天然歯に近い形で補える画期的な治療です。
しかし、天然歯がむし歯や歯周病になるように、インプラントもメインテナンスが不十分だとトラブルが起こる可能性があります。
例えば、インプラントがグラグラ動くようになった、インプラントを埋め込んだ辺りに痛みを感じるという方がいらっしゃいます。このようなトラブルの原因としては次の2つが考えられます。
インプラントの構造は、「フィクスチャー」という人工歯根を顎の骨に埋め込み、「アバットメント」というパーツで人工歯(被せ物)と連結させ固定しています。
アバットメントは食事や歯ぎしりなどの、咬み合わせによる負荷がかかり続けることで、少しずつ緩むことがあります。
このようにインプラントがグラつく原因が、アバットメントの緩みにある場合は、しっかりと締め直すだけの比較的簡単な治療で解決できます。
インプラント周囲炎とは、インプラントの周りが歯周病のように炎症を起こす症状のことです。天然歯の歯周病と同様、症状が進行すると歯を支える骨が溶けてしまいます。
インプラントの周囲の骨が溶けてしまうと、グラグラとした揺れに繋がります。初期の段階では自覚症状が少ないことも多く、揺れや痛みなど感じ始めた段階では、すでに重度まで進行してしまっているケースが多いです。
インプラント周囲炎の主な原因は歯周病菌ですが、症状が起こってしまう原因をさらに3つに分けることができます。
インプラントの材料、表面性状、デザインによる不具合
手術の手技や精度、補綴物の形態、メインテナンス、患者指導の不足
全身疾患、コンプライアンス不良(清掃不良、喫煙)、体質など
これらが原因となってインプラントの周囲が細菌感染を起こしたり、不適切な負荷がかかったりすると症状が急速に進行すると言われています。
インプラント周囲に付着したプラーク(歯垢)の除去、上部構造の研磨・インプラントの設計自体に問題がある場合は、補綴物のやりかえ・口腔衛生、生活習慣指導を行います。
外科的療法。歯茎を切開し、インプラントを直視できる状態にしてから周囲に付着した炎症の起きた部分を除去したり、インプラント体の表面を特殊な器具や薬剤で清掃、殺菌したのち歯茎を閉じます。抗生剤の投与や骨造成などを併用することもあります。
この状態になるとインプラントと骨の結合が完全に失われていることが多いため、インプラントが再び骨と結合し安定することは困難となります。一度インプラントを除去し、炎症部分を除去、骨が再生するのを待ってからインプラントを再度埋入手術が必要となります。
お伝えしたように、インプラント周囲炎の主な原因はプラークなどの汚れの清掃が不十分であることだと考えられます。また、喫煙によって免疫機能を低下させてしまい、歯ぐき炎症を起こしてしまうケースもあります。
インプラントは手術が終われば治療完了と考えられている方も多いですが、術後のご自身での清掃と定期的なメインテナンスに通っていただくことが、インプラントを長く使っていただくうえで最も大事な部分なのです。